Vビーム治療とは
Vビームは、最新の色素レーザー技術を使用した治療法で、赤ら顔、毛細血管拡張症、ニキビ跡の赤みなどの肌のトラブルに効果的です。このレーザーは、異常な血管を破壊することで、赤みを抑える働きがあります。Vビームは、さまざまな皮膚疾患に対する有効性と安全性から、多くのクリニックで採用されています。
Vビームのメカニズム
Vビームレーザーは、特定の波長(595nm)のレーザー光を使用します。この波長は、血液中のヘモグロビンに吸収され、光熱作用によって光エネルギーが熱エネルギーに変換されます。熱エネルギーは異常な血管を破壊し、周囲の健康な組織には最小限のダメージしか与えません。このプロセスにより、赤みや血管の目立つ症状が改善されます。
当院ではシネロン・キャンデラ社のVビーム2を使用しています。
Vビーム2はレーザーのパルス幅(照射時間)を調節できる新機能があり、これにより毛細血管の太さに対応した照射時間を設定することが可能となりました。さらに、内蔵のダイナミッククーリングディバイス(DCD)がレーザーに同期し、レーザー照射直前に冷却ガスを吹きつけることにより痛みと熱損傷を最小限に抑えます。
Vビーム治療における保険適応と自由診療
Vビーム治療は、さまざまな皮膚疾患に対して効果的なレーザー治療法です。しかし、保険適応となる疾患と自由診療(自費診療)となる疾患があります。
保険適応となる対象疾患
以下の疾患に対しては、医師の診断に基づいて保険適応が認められます。
- 単純性血管腫(ポートワイン母斑)
乳幼児に見られる体表の赤いアザです。出生時より存在し、小児期には鮮紅色やピンク色を呈することが多いです。前額部や眉間(サーモンパッチ)、眼瞼や後頭部(ウンナ母斑)などの一部を除くと自然消退することはありません。体の成長と共に病変も大きくなってしまいます。しこり状に盛り上がってくることもあり、治療が必要な場合があります。先天性の赤いあざであり、治療によって目立たなくすることが可能です。 - 乳児血管腫(いちご状血管腫)
乳児血管腫は乳児の良性腫瘍の中でもっとも多くみられます。赤くて表面がでこぼこのある野いちごのような見た目であることから、「いちご状血管腫」とも呼ばれます。生後1か月以内に現れ、1歳近くまで増大した後に自然退縮しますが、消失は不完全で、あとに瘢痕を残すことがあります。乳児血管腫については、とくに早期からのレーザー治療が推奨されます。 - 毛細血管拡張症
肌の表面近くに見える小さな血管を目立たなくします。毛細血管拡張症は、遺伝的要因や紫外線の影響などが原因となることがあり、レーザー治療が効果的です。いわゆる「小鼻の周りの赤み」は毛細血管拡張である場合が多いです。
先天性の赤アザについては、乳幼児であるほど皮膚が薄く、レーザーの深達度が良いことやレーザー照射後の治りが早いこと、色素沈着が少ないことなどから、乳幼児期の早期から治療を開始することが推奨されています。必要に応じて、局所麻酔薬を使用するなどして、なるべく痛みのないように治療を行っています。
保険適応外の自由診療で治療される対象疾患
以下の疾患に対しては、保険適応外となり自由診療となります。
- 赤ら顔
顔全体に赤みが広がる症状で、Vビームは血管をターゲットにして効果的に治療します。赤ら顔は、酒さなどの慢性皮膚炎によるものが多く、適切な治療を受けることで症状の改善が期待できます。 - ニキビ跡の赤み
ニキビ治療後に残る赤みを軽減します。とくに炎症性のニキビ跡には効果が高く、数回の治療で大きな改善が見られることが多いです。 - 赤ニキビ
活動中のニキビの赤みを減少させる治療になります。 - 老人性血管腫
老人に見られる赤い斑点であり、主に美容目的で治療されます。 - Vフェイシャル
Vビームを全顔に照射することで、肌のつや・ハリを回復し小じわを解消します。
ダウンタイムと経過
施術時は輪ゴムでパチンと弾かれる程度の痛みを感じます。乳幼児では局所麻酔(テープやクリーム)を使用します。Vビーム治療後、照射部位の一時的な赤みや腫れが起こりえますが、通常は数日以内に落ち着きます。多くの場合は、数回の治療で目に見える効果を実感できます。ダウンタイムは比較的短く、日常生活に支障をきたすことはほとんどありません。施術後すぐにメイクをすることも可能で、通常の生活に戻ることができます。
副作用
治療によっては、軽度の副作用が発生することがあります。たとえば、皮膚の一時的な色素沈着や腫れが挙げられます。これらの副作用は通常、数日から数週間で自然に消失します。また、まれに痂皮が形成されることがありますが、適切なアフターケアを行うことで、これも自然に治癒します。
Vビームの利点
Vビームの最大の利点は、その高い安全性と有効性です。レーザー治療は、薬物治療や他の外科的手段に比べて、副作用が少なく、治療後のダウンタイムも短いです。また、特定の波長を使用することで、周囲の健康な組織への影響を最小限に抑えることができます。これにより、患者は安心して治療を受けることができます。
Vビーム治療の実際
実際のVビーム治療は、まずカウンセリングから始まります。患者の症状や肌の状態を確認し、治療の適応を判断します。治療自体は数分から20分程度で終了し、痛みもほとんど感じることはありません。治療後は、抗炎症外用薬を塗布し、赤みや腫れを抑えます。
保険適応疾患の場合は3か月にいちど、自費診療の場合は月1回のペースで照射を行っていきます。
まとめ
Vビーム治療は、赤みや血管のトラブルを抱える多くの患者にとって効果的な解決策となります。ダウンタイムが短く、副作用も軽微であるため、日常生活への影響を最小限に抑えながら、健康で美しい肌を取り戻すことができます。一部疾患では保険適応での治療が可能ですので、肌の赤みや血管の目立ちに悩んでいる方は、受診してご相談ください。
参考文献
- 皮膚良性血管病変治療用レーザー装置Vbeam®について
- 小児を対象とした毛細血管奇形(単純性血管腫)に対する色素レーザー治療
- 単純性血管腫に対する色素レーザー治療と問題点
- 乳児血管腫の治療戦略〜クリニックの立場から〜
- 乳児血管腫に対するレーザー治療とプロプラノロール内服療法の併用
- 頭部・顔面乳児血管腫に対する可変式ロングパルス色素レーザーとプロプラノロール内服療法による治療戦略
- 苺状血管腫に対する早期ロングパルス色素レーザー治療の有効性の検討
- 血管腫血管奇形に対する色素レーザー治療
- Pulsed dye laser treatment of rosacea improves erythema, symptomatology, and quality of life
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