蕁麻疹(じんましん)

蕁麻疹の皮膚症状

蕁麻疹は、体のあちこちに赤くて盛り上がった皮疹(膨疹)が出て、かゆみを伴う病気です。皮膚科ではよく見る疾患で、誰もが一度は経験したことがあることと思います。

個々の膨疹は数時間で消えてしまうものの、出没を繰り返すのが特徴です。このため診察時には症状がまったく出ていない、という患者さんも多くいます。

蕁麻疹と一口に言っても実はいろいろな種類があり、その原因もさまざまです。

この記事では奥深い蕁麻疹の世界について、皮膚科専門医が徹底解説いたします。

目次

蕁麻疹の症状

日本皮膚科学会のガイドラインで、蕁麻疹は以下のように定義されています。

蕁麻疹は膨疹,すなわち紅斑を伴う一過性,限局性の浮腫が病的に出没する疾患であり,多くは痒みを伴う。

これを簡単な言葉で言えば、「赤くて少し盛り上がったかゆみを伴う皮膚症状が、全身に出たり消えたりする」ということになります。

蕁麻疹の皮膚症状は、「地ばれ」や「ミミズ腫れ」といった言葉で表現されることもあります。

蕁麻疹の症状は全身のどこにでも出現します。個々の皮疹の形、大きさ、持続時間はさまざまです。通常の蕁麻疹では、個々の皮疹は24時間以内には消えてしまいます(24時間以上持続する蕁麻疹は、蕁麻疹様血管炎という別の病気の可能性があります)。

多くの蕁麻疹は皮膚症状だけですが、腹痛、発熱、気分不良、気道閉塞感、嘔吐などの症状を伴うこともあり、これらの場合はアナフィラキシーや他の全身疾患の可能性も考えないといけません。

蕁麻疹はなぜ起こるか

蕁麻疹は、皮膚の中にあるマスト細胞(肥満細胞とも呼ばれます)という細胞が化学伝達物質のヒスタミンを放出することによって起こります。

ヒスタミンの働きで、皮膚の血管が拡張(紅斑)すると同時に、血管壁の透過性が亢進して血漿成分が血管外に漏れ出します(膨疹)。さらにヒスタミンが神経に働きかけて、かゆみを生じると考えられています。

蕁麻疹の種類

蕁麻疹は、「刺激誘発型蕁麻疹」「特発性蕁麻疹」の2つに大きく分類されます。

「刺激誘発型蕁麻疹」は、食物摂取や温熱刺激、発汗など、特定の刺激によって症状が引き起こされるタイプの蕁麻疹です。原因さえわかれば、それを避けることで予防が可能です。

一方で「特発性蕁麻疹」は、特定の誘因なく症状が出没するタイプの蕁麻疹です。実は蕁麻疹患者さんの7割が、この原因不明の特発性蕁麻疹であるとされています。

特発性蕁麻疹はさらに、発症6週間以内のものを急性蕁麻疹、6週間を超えたものを慢性蕁麻疹と呼びます。

刺激誘発型蕁麻疹の原因

刺激誘発型蕁麻疹として、以下のようなものが知られています。

アレルギー性蕁麻疹

食物、薬品、植物、昆虫の毒素などに曝露されることによって起こる蕁麻疹です。通常は原因物質に曝露後、数分から1-2時間以内に生じます。ただし、一部の肉アレルギー、納豆アレルギー、アニサキスアレルギー等では、数時間後に症状が誘発される場合があります。

食物依存性運動誘発アナフィラキシー(FDEIA)

特定の食物を摂取後、2-3時間以内に運動をすると生じるアナフィラキシー反応です。皮膚症状を伴うことが多いです。

原因食物としては、小麦、エビが多いです。全年齢でみられますが、とくに10歳代に多くみられます。

典型的なエピソードとしては、「お昼ご飯にスパゲティを食べ、その後すぐにジョギングをしていたところ、全身に蕁麻疹が出て息が苦しくなって救急搬送された」と言ったものが挙げられます。

非アレルギー性の蕁麻疹

アレルギー機序を介さないタイプの蕁麻疹になります。造影剤の静脈注射やサバ、タケノコなどの摂取により生じるものがあります。

アスピリン蕁麻疹

アスピリンを始めとするNSAIDs(痛み止め)の内服、注射または外用により誘発される蕁麻疹です。原因物質に曝露後、膨疹が現れるまでの時間には数分から数時間の幅が認められます。

物理性蕁麻疹

皮膚表面への物理的刺激によって起こされる蕁麻疹を総称して物理性蕁麻疹と呼びます。

刺激の種類によって、機械性蕁麻疹、寒冷蕁麻疹、日光蕁麻疹、温熱蕁麻疹、遅延性圧蕁麻疹、水蕁麻疹などがあります。

コリン性蕁麻疹

入浴、運動、精神的緊張など、発汗ないし発汗を促す刺激が加わった時に生じます。小児から30歳代前半までの成人に好発し、皮疹は小豆大くらいまでの小型の膨疹または紅斑としてみられます。

かゆみを伴うことが多いですが、ピリピリした痛みとして感じられることもあります。

接触蕁麻疹

皮膚や粘膜が特定の物質と接触することにより、接触部位に一致して膨疹が出現するタイプの蕁麻疹です。

通常、原因物質への曝露後数分ないし数十分以内に症状が出現し、数時間以内に消退します。

蕁麻疹の診断

蕁麻疹はその特徴的な症状と経過から、診断することは容易です。24時間以内に消えてしまうという性質上、診察室では皮膚症状がまったくない、ということも多いです。

皮膚症状をスマホなどで撮影しておいて、診察時に見せていただくと診断の助けになります。

蕁麻疹の予防

刺激誘発型の蕁麻疹の場合は、原因となる刺激を避けることで予防をしていくことが肝心です。

蕁麻疹の治療

抗ヒスタミン薬

薬物療法としては、抗ヒスタミン薬の内服が基本になります。抗ヒスタミン薬は、蕁麻疹の原因物質であるヒスタミンの働きをブロックする飲み薬になります。

旧世代の抗ヒスタミン薬では副作用として眠気が出ることがありましたが、最近の抗ヒスタミン薬は眠気が出にくいように改良されています。

群馬県は車社会で、日々の生活で運転をしなければならない方が多いので、眠気の出にくいタイプの抗ヒスタミン薬を優先して処方するようにしています。

蕁麻疹の注射薬

抗ヒスタミン薬等の治療でも治らない重症の慢性蕁麻疹の方には、注射薬(オマリズマブ:ゾレア®)での治療も可能です。

4週に1回、皮下注射をします。まずは3回投与をして、治療効果を判定します。

さいごに

蕁麻疹の症状、診断、治療についてまとめました。

蕁麻疹の症状でお悩みの方は、ぜひ一度ご相談ください。

参考文献

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この記事を書いた人

皮膚科専門医・指導医/アレルギー専門医/医学博士/日本医師会認定産業医/がん治療認定医
2001年慶應義塾大学医学部卒業

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