いぼ(尋常性疣贅)

「いぼ」という言葉は、皮膚表面にできる小さな突起状の病変を指す言葉として一般に使われています。

一般に言われる「いぼ」の中には実はさまざまな疾患が含まれていますが、ここではいぼの中でもウイルスによって引き起こされるいぼ、その名も尋常性疣贅(じんじょうせいゆうぜい)について解説したいと思います。

目次

尋常性疣贅の症状

尋常性疣贅は手や足の指、足の裏などの皮膚にできることが多いです。ドーム状に盛り上がった、表面が少しざらざらとした小さなしこりができます。足の裏にできた尋常性疣贅は一見ウオノメやタコのように見えることがありますが、ダーモスコピーという特殊な拡大鏡で見ることで区別できます。

1個だけできる場合もあれば、多発することもあります。

尋常性疣贅の原因

尋常性疣贅は、ヒトパピローマウイルス(HPV)というウイルスが皮膚に感染することによって発症します。HPVは正常の皮膚に感染することはほとんどありませんが、軽微な傷から皮膚の中に入り込み、皮膚のもっとも下の層である基底層の細胞に感染します。

HPVは現在220種類以上の遺伝子型が確認されています。このうち、尋常性疣贅の原因になるのは、HPV2a/27/57型になります。

尋常性疣贅の治療

液体窒素凍結療法

尋常性疣贅の液体窒素凍結療法の写真
液体窒素をスプレーで噴霧しています

−196℃の液体窒素を用いて、患部を凍らせる治療法です。凍結と融解を繰り返すことで、細胞にダメージを加えます。人工的に凍傷を起こしていると思っていただけるとわかりやすいです。

処置後に水ぶくれや、血豆になることがありますが、これは正常の反応なので心配する必要はありません。

治療するときにはどうしても痛みがあります。とくに小さなお子様には嫌われてしまう治療法です。

保険適応の治療で、尋常性疣贅治療のゴールドスタンダードといえます。

1−2週おきに通院していただく必要があります。治療間隔が伸びてしまうと、その間にまたイボが大きくなってしまって、元の木阿弥です。

後で述べるサリチル酸外用と組み合わせると、より効果的です。

サリチル酸外用

サリチル酸は皮膚の一番表面の角層を剥がす作用のお薬です。サリチル酸外用の作用機序としては角層の剝離に加え、疣贅に対する免疫賦活化作用もあると考えられています。特に液体窒素凍結療法との併用が効果的であると報告されています。

日本では50%サリチル酸絆創膏が使用可能です。疣贅の大きさに小さく切って貼っていただきます。周囲にはみ出すと、周囲の正常皮膚にダメージが加わってしまうので注意が必要です。

漢方薬(ヨクイニン)

ヨクイニンはハトムギの種皮を除いた成熟種子を乾燥した生薬です。

多発しているイボ、液体窒素治療でなかなか良くならないイボに対して使うことがあります。

全国市販後調査では、627例中236例で疣贅が消失、511例で改善以上の結果であったと報告されています。

副作用としては、胃部不快感、下痢などの消化器症状やかゆみなどの軽微なもののみでした。

イボはぎ法

局所麻酔下にて眼科用剪刃などを用いて疣贅組織を完全に切除する方法でです。外科的切除の1つで、疣贅組織を取り残すと当然再発します。難易度の高い治療法になります。

CO2レーザー

液体窒素などの標準治療が無効であった場合の選択肢として、CO2レーザーによる焼灼治療があります。

CO2レーザーの効果については、爪周囲の疣贅患者に対する研究があり、71%-80%の消失率であったと報告されています。

爪周囲は、標準治療である液体窒素凍結療法では無効・難治とされる部位ですので、選択肢の1つとして推奨されています。

ロングパルスダイレーザー

ロングパルスダイレーザーは、波長595nmのレーザー光線です。血液中を流れる赤血球のヘモグロビンによく吸収されて熱を発することで、血管を攻撃して破壊します。

イボに照射すると、イボを栄養している血管を選択的に破壊して、その熱変性により周囲のウイルス感染細胞を壊死させます。

よくある質問

尋常性疣贅はガンにならないの?

HPVは子宮頸がんの原因としても知られていますが、子宮頸がんの原因となるのは主に16型、18型になります。ウイルスの型が違いますので、尋常性疣贅が癌化するという心配はしなくて大丈夫です。

イボはどうやってうつるの?

主としてヒトからヒトへの直接的接触感染ですが、間接的接触によっても感染すると考えられています。疣贅患者さんの問診から、銭湯、温泉施設、プール、ジムなど公共施設で感染したケースが報告されています。

参考文献

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この記事を書いた人

皮膚科専門医・指導医/アレルギー専門医/医学博士/日本医師会認定産業医/がん治療認定医
2001年慶應義塾大学医学部卒業

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