足の水虫(足白癬)

趾間型足白癬の臨床写真

むずむずとかゆい足の水虫は、とくに夏場の暑い時期に多く見られる疾患です。水虫は医学用語では「白癬(はくせん)」といい、足の水虫は足白癬、爪の水虫は爪白癬、体に出る水虫は体部白癬などと、部位ごとに名前を使い分けます。この記事では主に足の裏や足ゆびのまたに生じる水虫である足白癬について解説します。

目次

足白癬の症状と分類

足白癬は、日本国内では人口の約21.6%(約2500万人)が罹患していると推定されており、皮膚科の外来ではごくありふれた疾患です。

足白癬は以下の3つの病型に分類されています。

趾間型

もっとも多い病型で、足ゆびの間の紅斑や小水疱、皮ムケなどの症状が見られます。第4趾間に好発します。

痒みを伴い、かき壊すと痛みが出たり、細菌感染を併発して蜂窩織炎になってしまうこともあります。

とくに糖尿病の患者さんでは、足潰瘍や蜂窩織炎、壊死性筋膜炎などの重症化のリスク因子ともなりますので、しっかりと治療する必要があります。

小水疱型

土踏まず、足ゆびの根本、足縁に小さな水ぶくれができるタイプです。乾燥すると白い皮ムケになります。梅雨時に起こりやすく、秋には自然と治ってしまうことが多いです。

角質増殖型

足の裏や踵の皮膚がガサガサと厚ぼったくなるタイプです。痒みはほとんどありませんが、亀裂ができて痛みを生じる場合があります。このタイプは外用薬では治りづらいので、内服薬での治療が必要になることもあります。

足白癬の原因

足白癬は真菌(カビ)の一種である皮膚糸状菌が皮膚に感染して生じる病気です。現在日本国内で見られるのは、Trichophyton rubrumならびにTrichophyton mentagrophytesという真菌で、これら2種類で日本の白癬の95%以上を占めています。

皮膚糸状菌は皮膚角層の主な構成成分であるケラチンを栄養素として生息します。このため白癬の症状は角層、爪、毛包などに生じるのです。

カビは皆様もご存知の通り、ジメジメした高温多湿の環境でよく発育します。蒸れやすい足ゆびの間に生じることが多いのも納得ですね。湿気の多い梅雨時から汗をかく夏にかけて水虫が悪化するのもこのためです。

足白癬の診断

足白癬の診断には、病変部に皮膚糸状菌がいることを証明しなくてはなりません。このために真菌鏡検という検査を行います。

病変部の皮ムケなどを採取して、特殊な薬品で溶かして顕微鏡で観察します。糸クズのような皮膚糸状菌が観察されれば、足白癬の診断となります。

症状の見た目は水虫らしくても、この検査で糸状菌が見つからなければ白癬の診断にはなりません。

症状を診ただけで足白癬を診断するということは、少なくとも皮膚科専門医であれば決してしません。実際、熟練した皮膚科医でも視診のみで足白癬を診断すると、その感度は0.37ととても低いことが研究でわかっています。

足白癬の治療

外用治療が基本

足白癬の治療は抗真菌作用を持つ塗り薬が基本になります。1日1回、両足の足ゆびの間、足の裏全体(踵を含む)に広く塗っていただきます。

症状があるのが片足だけだとしても、両足にまんべんなく外用することをオススメしています。

最低でも4週間程度は毎日治療を続けないと足白癬は治りません。また、症状がよくなった後もしばらくは外用を続けることが必要です。

角質増殖型には内服治療

先ほども述べた通り、角質増殖型足白癬は外用薬では治りづらいので、抗真菌薬の飲み薬(テルビナフィン等)が必要になることもあります。

耐性菌の問題

最近日本国内で、従来の抗真菌薬が効きづらい薬剤耐性糸状菌の症例が報告されてきています。私もそのような事例の経験があり、学会で報告しています。

症状が治りづらい場合には、薬剤の変更も含めて検討させていただきます。

接触皮膚炎を合併している場合

水虫らしいなと思って市販の塗り薬で治療を開始する方も多いと思います。これらの外用薬にかぶれて(接触皮膚炎)、悪化したと言って病院に駆け込んでくる患者さんをときどき見かけます。

接触皮膚炎を起こしている場合は、まず接触皮膚炎の治療を優先します。短期間ステロイドの外用薬を塗っていただいて、かぶれの症状をよくしてから白癬の治療に移ります。

外用薬でかぶれやすい患者さんには、内服薬での治療をオススメすることもあります。

その他注意事項

足白癬は、治ってもまたもらってきてしまう(再感染)ことがあります。足を毎日よく洗って、清潔を保つことが感染予防に重要です。

よくある質問

足白癬はどうやってうつるのですか?

温泉場や銭湯、あるいは足白癬患者がいる家庭の足拭きマットには、ほぼ100%白癬菌が存在しています。入浴後にそのようなマットを利用すると、白癬菌が足に付着します。

原因となる糸状菌が皮膚に付着したまま24時間が経過すると、そのまま皮膚に寄生してしまうと言われています。皮膚に傷がある場合は、寄生までのスピードが短縮します。

銭湯など公共の場で裸足になったあとは、帰宅してから必ず足をよく洗うことをオススメします。

塗り薬の治療はどのくらい続けたらよいですか?

外用治療の期間は病変部の角層の厚さによって異なります。趾間型では2カ月以上、小水疱型では3カ月以上、角化型では6カ月以上が目安となります。

症状がよくなったからと言って、自己判断で治療を中止することのないようにしてください。

参考文献

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この記事を書いた人

皮膚科専門医・指導医/アレルギー専門医/医学博士/日本医師会認定産業医/がん治療認定医
2001年慶應義塾大学医学部卒業

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