毎年冬になると、手足のゆびや、耳が赤く腫れて痒くなる。そんな症状に悩まされている方も多いと思います。これらはしもやけの典型的な症状です。本記事ではしもやけの症状、原因、治療について皮膚科専門医が徹底解説します。
しもやけの症状
しもやけは医学用語では「凍瘡(とうそう)」と呼ばれます。
しもやけになると、耳や手足の指先など、体の末端部分が赤く腫れてかゆみを伴います。気温が低くなる冬季を中心に、春から秋にかけて多くみられます。とくに平均気温が4−6℃で、1日のうちの気温差が10℃以上の条件で発症しやすいと言われています。入浴などにより血行がよくなると痒みが強くなることも特徴です。
しもやけは子どもに多い病気ですが、大人でもみられることがあります。男性よりも女性で多くみられる傾向があります。
手足の指が全体的に赤く腫れ上がる「T型(樽柿型)」と、指に赤い円形の皮疹が生じる「M型(多形紅斑型)」の2種に大きく分けられます。子どもではT型が多く、大人ではM型が多いとされています。T型とM型の症状をあわせ持つ場合もあります。症状が進むと水ぶくれができたり、傷(びらん、潰瘍)になることもあります。
しもやけの原因
しもやけの原因は、寒冷刺激による血液の循環障害です。寒冷刺激にさらされると、体温を保とうとする防御反応で指先など体の末端部分の血管が収縮します。これによって末端部分の血の巡りが悪くなり、組織が障害されることでしもやけを発症します。子どもや女性はもともと指先の血管が細いので、しもやけを発症しやすいと言えます。
大人のしもやけで治りが悪い場合や、冬季以外にも症状が出る場合は、エリテマトーデス(LE)やシェーグレン症候群などの膠原病が隠れている可能性があるので、精密検査が必要になることもあります。
しもやけの治療
しもやけの治療には、血流改善作用のあるビタミンEの外用・内服などを行います。ヘパリン類似物質外用薬も用いられます。痒みや腫れなどの炎症症状が強い場合は、ステロイド外用薬を処方します。
しもやけに有効な漢方薬もありますので、受診時にご相談ください。
通常は気候が暖かくなってくると、自然にしもやけの症状は改善します。
しもやけの予防
しもやけになりやすい人は、冬季の予防策が重要です。寒い日に外出する時には、手袋、マスク、耳当て、帽子などで手指や耳などをしっかりと保温するようにしてください。手袋や靴下が濡れた状態のまま履き続けると、しもやけを悪化させてしまいます。速やかに乾かすようにしてください。
冷えた部分を急速に温めると、痒みなどの症状が強く出ることもあります。患部の血行を改善させるために、マッサージもオススメです。
凍瘡と凍傷の違い?
患者さんに「凍瘡」という診断名を伝えると、「凍傷(とうしょう)」と勘違いされることが多いので、ここで両者の違いについて解説しておきます。
凍傷は、雪山やスキー場など氷点下になるような環境に長時間さらされることで、重度の血行障害から皮膚の組織が凍って壊死してしまう病気です。気温−12℃度以下でおこることが多いですが、曝露時間や風速なども発症に影響します。
登山家が冬山で遭難して、凍傷で指を失ってしまったという話を聞いたことがあるかもしれません。
通常の生活の中で凍傷を発症することはまれと思われるので、心配される必要はないかと思います。