「ある日、髪をとかしていたら円形に抜けている部分を見つけた」
「子どもの頭に、地肌が見える場所がある」
「ストレスが原因なのか、自然に治るのか知りたい」
突然の脱毛に気づくと、このまま広がるのではないかと不安になる方も多いと思います。円形脱毛症は、円形の脱毛斑ができるだけでなく、複数の脱毛斑が現れたり、頭髪以外の毛が抜けたりすることもある病気です。
ただし、部分的に髪が抜ける病気は円形脱毛症だけではありません。脱毛の原因を確認し、症状や重症度に合った対応を考えることが大切です。
この記事では、円形脱毛症の症状、原因、検査、治療について皮膚科専門医が解説します。
円形脱毛症とは
円形脱毛症は、毛の細胞が作られる毛包の周囲に炎症が起こり、頭髪や体毛が抜ける病気です。多くの場合、脱毛した部分にも毛穴は残っています。
典型的には、境界がはっきりした円形または楕円形の脱毛斑が突然現れます。脱毛部の皮膚は比較的なめらかで、通常は強い痛みやかゆみを伴いません。ただし、病気が活発な時期には、軽いかゆみ、違和感、赤みなどを感じることがあります。
円形脱毛症は子どもから高齢の方まで、どの年代にも起こる可能性があります。脱毛の範囲や経過には個人差があり、自然に毛が生えてくる場合がある一方、再発を繰り返したり、脱毛範囲が広がったりすることもあります。
円形脱毛症の主な症状と種類
円形脱毛症では、頭髪だけでなく、眉毛、まつ毛、ひげ、体毛などに脱毛が起こることがあります。爪に小さなくぼみや横すじなどの特徴的な変化がみられる場合もあります。
円形脱毛症の主な種類は次のとおりです。
通常型(単発型・多発型)
円形または楕円形の脱毛斑が1つだけみられるものを単発型、複数みられるものを多発型と呼びます。脱毛斑同士がつながり、不規則な形になることもあります。
蛇行型
後頭部から側頭部など、髪の生え際に沿って帯状に脱毛するタイプです。
全頭型
脱毛が頭部全体に広がり、ほぼすべての頭髪が抜けた状態です。
汎発型
頭髪に加えて、眉毛、まつ毛、ひげ、体毛など、全身の毛が広い範囲で抜けるタイプです。
びまん型
はっきりした円形の脱毛斑を作らず、頭部全体の毛がびまん性に抜けるタイプです。
重症度は脱毛面積だけで決まるものではありません。脱毛の進み方、眉毛・まつ毛や爪の変化、再発回数、治療への反応、患者さんが感じている心理的・社会的な負担も大切な要素です。
円形脱毛症の原因と発症の仕組み

Alopecia areata: from immunopathogenesis to emerging therapeutic approaches より
円形脱毛症は、成長期の毛包、つまり毛を作っている組織を免疫が誤って攻撃することで起こる自己免疫疾患であると考えられています。
本来、毛包には免疫反応を受けにくくする仕組みがあります。円形脱毛症ではこの仕組みが崩れ、免疫を担当する細胞が毛包の周囲に集まります。その結果、毛の成長サイクルが妨げられ、毛が抜けやすくなります。
発症には、免疫の変化だけでなく、遺伝的ななりやすさや環境因子など、複数の要素が関係すると考えられています。家族内で発症することはありますが、遺伝だけで発症が決まる病気ではありません。
また、円形脱毛症を「ストレスだけが原因の病気」と考えるのは正確ではありません。精神的・身体的な負担が発症や悪化のきっかけになる可能性はありますが、ストレスの有無だけで原因を説明することはできません。
円形脱毛症では、アトピー性皮膚炎などのアトピー性疾患、甲状腺疾患、尋常性白斑をはじめとする自己免疫疾患などを伴うことがあります。ただし、すべての患者さんに合併症があるわけではありません。
円形脱毛症と間違えやすい脱毛症
円形または部分的な脱毛があっても、必ずしも円形脱毛症とは限りません。鑑別が必要な病気や状態には、次のようなものがあります。
- 頭部白癬:真菌が原因となる頭皮の感染症
- 抜毛症:自分で毛を抜くことが繰り返される状態
- 男性型脱毛症・女性型脱毛症
- 休止期脱毛症:体調の変化などをきっかけに広い範囲で抜け毛が増える脱毛症
- 牽引性脱毛症:髪を強く引く髪型などによって起こる脱毛
- 瘢痕性脱毛症:炎症などにより毛包が壊れ、毛穴が失われる脱毛症
- 膠原病、甲状腺疾患、梅毒などに伴う脱毛
見た目だけでは区別しにくい場合があります。市販の育毛剤などで様子を見続ける前に、皮膚科専門医に受診して診断を受けることが大切です。
円形脱毛症の診断と検査
診察では、脱毛が始まった時期や進み方、過去の発症、家族歴、持病、服用中の薬などを伺います。そのうえで、脱毛斑の形、毛穴の状態、頭皮の赤みや鱗屑、眉毛・まつ毛や爪の変化などを確認します。
必要に応じて、次のような検査を行います。
ヘアプルテスト
毛髪の束をやさしく引き、毛が抜けやすくなっているかを調べます。病気の活動性を判断する手がかりになります。また、抜けた毛の状態を観察して、診断の参考にします。
ダーモスコピーによる観察
頭皮や毛を拡大して観察する検査です。脱毛部にみられる毛の形状や毛孔の状態などを確認し、診断や病勢の評価に役立てます。
血液検査
円形脱毛症そのものを一つの採血項目で確定することはできません。問診や診察から甲状腺疾患、鉄欠乏性貧血、自己免疫疾患などの合併が疑われる場合に、必要な項目を選んで血液検査を行います。
すべての患者さんにすべての検査が必要なわけではありません。必要な検査は、症状や経過を踏まえて医師が判断します。
円形脱毛症の治療

治療法は、年齢、病型、脱毛範囲、進行の速さ、発症からの期間、過去の治療、患者さんの希望などを踏まえて検討します。軽症では自然に発毛することもあるため、経過観察を選択する場合もあります。
一方、脱毛が急速に広がっている場合や、生活への影響が大きい場合には、治療を早めに検討します。どの治療でも効果には個人差があり、いったん発毛しても再発することがあります。
ステロイド外用療法
炎症を抑えるステロイド薬を脱毛部に塗る治療です。日本皮膚科学会のガイドラインでは、単発型や、脱毛斑が融合していない多発型に対して強く推奨されています。
塗る量や回数、薬の強さは症状に応じて調整します。長期間または広い範囲に自己判断で使用すると、皮膚が薄くなる、毛細血管が目立つ、毛包炎が起こるなどの副作用が生じることがあります。
ステロイド局所注射療法
脱毛部の皮膚にステロイド薬を少量ずつ直接注射する治療です。当院では、痛みを伴う治療であることから成人を対象とし、月1回の間隔で行います。国内ガイドラインでも、主に成人の単発型・多発型に対して強く推奨されています。
薬を病変へ直接届けられる一方、注射時の痛みがあります。注射部位に皮膚のへこみ、皮膚が薄くなる変化、色の変化などが起こることもあるため、投与量や間隔を調整しながら行います。
紫外線照射療法

紫外線によって局所の免疫反応を調整する治療です。当院では、脱毛部に紫外線を照射するエキシマライトによる治療を行っています。小児から対応可能で、週1~2回の通院をおすすめしています。
治療中は赤み、水ぶくれ、色素沈着などに注意します。効果がみられないまま漫然と続けるのではなく、一定期間ごとに治療効果を評価することが大切です。
JAK阻害薬による治療
JAK阻害薬は、円形脱毛症に関係する免疫の情報伝達を抑える内服薬です。国内では、バリシチニブ(商品名:オルミエント®)とリトレシチニブ(商品名:リットフーロ®)が、重症かつ難治性の円形脱毛症に対して承認されています。
対象となるのは、原則として頭部のおおむね50%以上に脱毛があり、過去6カ月程度に自然な発毛がみられない方です。バリシチニブは、2026年6月の適応拡大により、成人に加えて12歳以上かつ体重30kg以上の小児にも使用できるようになりました。リトレシチニブは12歳以上が国内承認上の対象です。ただし、年齢や体重だけで治療が決まるわけではありません。適応は最新の添付文書等に基づき判断します。
治療前には、採血検査と胸部レントゲン検査が必要です。これらの検査に加えて、感染症や結核、妊娠の可能性、持病、併用薬などを確認します。治療中も血液検査などによる経過観察が必要です。感染症をはじめとする副作用があり、悪性腫瘍や心血管系のリスクについても患者さんごとに慎重な検討が必要です。
JAK阻害薬は円形脱毛症を完全に治して再発を防ぐ薬ではありません。効果が現れるまでに時間がかかることがあり、中止後に再び脱毛する可能性もあります。予想される効果、リスク、治療を続ける期間などについて、医師と十分に相談して決めることが大切です。
治療中の注意点と日常生活
円形脱毛症は、洗髪の仕方や患者さんの行動が悪かったために起こる病気ではありません。抜け毛が目立っても、必要以上に洗髪を避ける必要はありません。頭皮を強くこすらず、やさしく洗いましょう。
脱毛部は紫外線や外傷の影響を受けやすいため、帽子や日傘などで保護することも大切です。ウィッグや帽子は見た目を整えるだけでなく、学校、仕事、外出時の負担を軽くする選択肢になります。国内ガイドラインでも、かつらの使用は強く推奨されています。
円形脱毛症は、脱毛面積の大小にかかわらず、気持ちや生活に大きな影響を与えることがあります。人目が気になる、学校や仕事へ行きづらい、気分の落ち込みや不安が続くといった場合は、診察時に遠慮なくお伝えください。
早めの受診を検討したい症状や状況
次のような場合は、早めに皮膚科へご相談ください。
- 脱毛範囲が短期間で広がっている
- 脱毛斑が複数ある、または互いにつながってきた
- 頭部全体の抜け毛が急に増えた
- 眉毛、まつ毛、ひげ、体毛にも脱毛がある
- 爪に小さなくぼみや変形が現れた
- 頭皮に強い赤み、鱗屑、痛み、膿などがある
- 子どもに脱毛がみられる
- 脱毛による不安や気分の落ち込みが強い
脱毛斑が小さくても、円形脱毛症以外の病気が隠れていることがあります。診断を受けることは、必要な治療を選ぶだけでなく、治療せず経過をみられる状態かを判断するためにも役立ちます。
とも皮膚科クリニックでの診療
とも皮膚科クリニックでは、脱毛の状態や経過、患者さんのお悩みを確認し、円形脱毛症か、ほかの脱毛症かを診断します。
問診や診察から合併疾患などが疑われる場合には、原因や背景を確認するためのスクリーニング採血を行います。治療法は、年齢、病型、脱毛範囲、重症度、経過などを踏まえて検討します。
小児についても年齢を問わず診療しています。お子さんの脱毛に気づいた場合もご相談ください。
当院では、円形脱毛症に対して次の治療を行っています。
- ステロイド外用療法
- 成人を対象とした、月1回のステロイド局所注射療法
- 小児から対応可能な、週1~2回のエキシマライトによる紫外線照射療法
- オルミエント®またはリットフーロ®によるJAK阻害薬治療
すべての治療がすべての患者さんに適しているわけではありません。とくにJAK阻害薬は、適応条件を満たす重症かつ難治性の患者さんについて、有効性とリスクを確認したうえで治療を検討します。当院は日本皮膚科学会が定める施設要件を満たしており、オルミエント®、リットフーロ®のいずれも処方可能です。
JAK阻害薬を開始する前の採血検査は当院で行います。胸部レントゲン検査については、健診結果を確認するか、医療機関への紹介状を当院で作成し、検査を受けてきていただきます。紹介先は主に高崎市内のクリニックですが、患者さんのご住所や勤務地に合わせて対応します。内服治療を開始した後は、原則として3カ月に1回受診していただき、検査や症状を確認します。
脱毛が気になる場合は、自己判断で抱え込まず、皮膚科へご相談ください。
受診をご希望の方は、当院ホームページからWeb予約をお取りください。
まとめ
円形脱毛症は、免疫の働きによって毛包の成長が妨げられる自己免疫疾患です。ストレスだけが原因ではなく、遺伝的ななりやすさや免疫、環境因子などが複雑に関係すると考えられています。
軽症では自然に発毛することもありますが、再発したり、脱毛範囲が広がったりする場合もあります。治療法は、症状や重症度などを踏まえて検討します。
突然の脱毛、広がる脱毛、子どもの脱毛など、気になる症状がある場合は、皮膚科へご相談ください。
よくある質問
参考文献
- 円形脱毛症診療ガイドライン2024
- Alopecia areata – Current understanding and management
- Alopecia areata
- The Alopecia Areata Severity and Morbidity Index (ASAMI) Study
- Lifestyle Factors Involved in the Pathogenesis of Alopecia Areata
- The dermatoscope in the hair clinic: Trichoscopy of scarring and nonscarring alopecia
- Local corticosteroids for alopecia areata: A narrative review
- Janus kinase inhibitors for alopecia areata: A systematic review and meta-analysis
- Efficacy and safety of ritlecitinib in adults and adolescents with alopecia areata: a randomised, double-blind, multicentre, phase 2b–3 trial
- Long-term efficacy and safety of baricitinib in patients with severe alopecia areata: 104-week results from BRAVE-AA1 and BRAVE-AA2
- Baricitinib Withdrawal and Retreatment in Patients With Severe Alopecia Areata: The BRAVE-AA1 Randomized Clinical Trial
- British Association of Dermatologists living guideline for managing people with alopecia areata 2024
- Quality of life in children and adolescents with alopecia areata—A systematic review
- The burden of alopecia areata: A scoping review focusing on quality of life, mental health and work productivity
- The associated burden of mental health conditions in alopecia areata: a population-based study in UK primary care
- Alopecia areata: from immunopathogenesis to emerging therapeutic approaches

