くしゃみ、鼻水、鼻づまり、目のかゆみなど花粉症で悩まれている方に、注射治療薬のご案内です。
スギ花粉症とは?
スギ花粉症は、今や日本人の4人に1人が罹患していると言われる国民病です。スギ花粉が原因のアレルギー性鼻炎・結膜炎で、鼻水、くしゃみ、鼻づまり、目のかゆみなどの症状があります。これらの症状は、スギ花粉の飛散期である春先にとくに顕著となります。
スギ花粉症の治療
スギ花粉症治療の原則は、以下の4点になります。
- 抗原除去・回避
- 薬物療法
- アレルゲン免疫療法
- 手術療法
花粉症の薬物療法は重症度に応じて選択されますが、メインとなるのは抗ヒスタミン内服薬です。花粉症の原因となるヒスタミンの働きをブロックするお薬になります。
その他症状や重症度に応じて、点鼻薬(ステロイドや血管収縮薬)、点眼薬(抗ヒスタミン薬やステロイド)、その他の内服薬が使用されます。
花粉症の重症度判定
花粉症の重症度は、くしゃみ、鼻水、鼻づまりの程度をスコア化して判定されます。具体的には、1日のくしゃみ回数、1日の鼻かみの回数、鼻づまりについては1日の口呼吸の時間で分類します。
花粉症治療薬ゾレア®(オマリズマブ)
ゾレア®は重症季節性アレルギー性鼻炎(スギ花粉症)を適応として2019年に保険適応承認された注射薬です。ゾレア®は、IgEのマスト細胞結合部位Cε3に対するヒト化抗ヒトIgEモノクローナル抗体であり、遊離したIgEと結合し、最終的にマスト細胞との結合を妨げて、その活性化を抑制します。
鼻症状に対しては40%、目の症状には50%の抑制効果があるとされています。
対象となる患者さん
ゾレア®の投与対象となるのは、充分な治療(内服薬、ステロイド点鼻薬)を行っても重症・最重症の花粉症の患者さんになります。
重症・最重症とは、具体的には、
- 1日の平均くしゃみ回数が11回以上
- 1日の平均鼻かみ回数が11回以上
- 鼻づまりが非常に強く、口呼吸の時間が1日のうちかなりの時間ある(もしくは1日中完全につまっている)
のいずれかを満たす患者さんということになります。
その他の条件としては、
- スギ花粉特異的IgEがクラス3以上
- 体重が20-150 kg
- 血清総IgE値が30-1500 IU/mLの範囲
- 当院では15歳以上の患者さんのみ
のすべてを満たす必要があります。
スケジュール・費用等について
ゾレアの投与量・投与スケジュールは、血清総IgE値と体重で決定されます。2週間隔もしくは4週間隔で、最長12週間の注射を行います。
費用負担は3割負担の方で、ゾレア®の薬剤費のみで4,444円から69,953円かかります。実際には、月あたり8,744円から17,488円程度の範囲でおさまることが多いです。このほかに、再診料や同時に処方される抗ヒスタミン剤等の費用がかかります。
費用負担について詳しくは、メーカーのホームページでご確認ください。
ゾレア®投与の流れ
問診にて花粉症の治療歴、重症度の確認を行います。総IgE値やスギ花粉に対するIgE抗体をチェックするために血液検査を行います。1週間以上、既存の治療(抗ヒスタミン剤、点鼻ステロイド薬)を行います。
血液検査結果の説明と、初診時に処方された薬の効果判定を行います。治療を行っても重症以上の症状が残る方にはゾレア®の適応が考慮されます。血液検査結果と体重から投与量・スケジュールを決定し、費用等のご説明を行います。
ゾレア®による治療をご希望の場合は、投与開始日の予約を取得していただきます(高額薬剤のため、必要時に発注して投与しています)。
ゾレア®の注射を開始します。アレルギー反応出現の有無を確認するため、初回投与時は注射後30分の院内待機をお願いしています。
2-4週の間隔でゾレア®の注射を行います。ゾレア®の注射治療は最長12週間となります。
花粉症のシーズンが終わった後は、来年に向けてスギ花粉症の舌下免疫療法を受けることをお勧めいたします。
さいごに
スギ花粉のシーズンは受験シーズンとも重なるため、しっかりと治療を行って学業に集中していただきたいです。成人においても、花粉症のため仕事に集中できないとか、薬の副作用で眠気が出てしまうなどの場合に注射の治療はお勧めだと思います。
スギ花粉症でお困りの方はぜひ検討してみてください。